Derm.2012
The Adventure of the Lion's Mane
神人 正寿
1
1熊本大学皮膚科形成再建科
pp.127
発行日 2012年4月10日
Published Date 2012/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412103292
- 有料閲覧
- 文献概要
(軽いネタバレを含んでいますので推理小説好きの人はご注意を)ご存じの通りシャーロック・ホームズの趣味の1つに,その優れた観察眼で初対面の人の些細な仕草から出身地や職業を正確に言い当てる,というものがある.例えば,ワトスン博士と初めて出会って握手した際,そのぎこちなさと顔の日焼けと手首の白さなどからアフガニスタンで軍医をしていたことを見事に推理して彼を驚かせている.一方,口の周りのかぶれを診てマンゴーを食べたことを言い当てたり,皮膚筋炎を診て胃癌を見つけて患者さんを驚かせるのは皮膚科医の醍醐味の1つであり,名皮膚科医は時に名探偵にたとえられる.私もミステリーが好きで(少なくとも英語の論文よりは)熱心に読んでいるが,残念ながら漫然と読んでいても臨床力が上がるわけではないらしい.カンファレンスではワトスンやレストレイド警部のようにまとはずれの診断を繰り返し,同僚の名推理を引き立てるばかりの毎日である.
ちなみに,皮膚病がストーリーにからむミステリーというと『砂の器』をはじめとして『白面の兵士』・『虚無への供物』・『悪魔の手毬唄』や『アトポス』が思い浮かぶ.しかし,皮疹がトリックや謎解きの重要な鍵となるミステリーとなると寡聞にして標題の作品ぐらいしか聞いたことがない.実を言うと,「皮膚描記症のダイイング・メッセージ的な使い方」とか「毒物を注射する際に,アトピーで掻破したところに刺入したためばれなかった」などのアイデアを数年温めている.著作権を放棄しますので,どなたかに名作に仕立て上げていただきたいものである.
Copyright © 2012, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.