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男性型脱毛症(male pattern hair loss:MPHL)は,遺伝的背景を持つ男性に思春期以降に始まり,前頭部から頭頂部にかけての毛包のミニチュア化,軟毛化を経て外観的に特有のパターンの薄毛を呈する現象のことである.ヒトの皮膚,脂腺系,毛包には5α-reductase(5αR)が存在する.これはtestosteroneをさらに活性の高いdihydrotestosterone(DHT)に変換するために必要な還元酵素である.酵素反応産物であるDHTはMPHLにおける軟毛化現象の発症に大きく関与している.5αRには2つのisoenzymeがあり,typeⅠは頭皮を含む全身の皮膚に分布し,typeⅡは毛包および前立腺に局在する.現在MPHLの治療薬として推奨されているfinasterideが5αR typeⅡの阻害剤であるのに対し,dutasterideはtypeⅠ,Ⅱの二重阻害剤で,前立腺肥大症の治療薬として開発された.dutasterideはfinasterideと比較してtypeⅡ5αRに対しては約3倍,typeⅠ5αRに対しては約100倍の阻害活性を示し,MPHLにおいてもその効果が期待されてきた.2006年のMPHLにおけるdutasteride第Ⅱ相試験では,dutasterideは用量依存的にDHTを抑制し,0.5mg/日投与は12週,24週の期間においてfinasteride 5mg/日に相当する増毛効果を示すと報告されている.本論文では,dutasteride 0.5mg/日内服の効果,安全性および忍容性を検討するために,ランダム化,二重盲検,プラセボ対照,第Ⅲ相試験を行った.18~49歳のMPHLの男性148名をdutasteride 0.5mg/日群73名,プラセボ群75名にランダム化し,6か月間の投与期間と4か月間の追跡期間を設定した.治療薬投与前(ベースライン)と3,6,10か月後の,hair counts,被験者の自己評価,および治験担当医師による写真を用いた評価でdutasteride群において有意に増毛効果を認めた.また,有害事象の発現率は両群とも同程度であり,治験薬との関連性ありと判断された有害事象の多くが性機能系の事象であったが,両群間に有意差はみられなかった.今後,さらに長期間におけるdutasterideの効果が評価され,MPHLに対するdutasrerideの有効性が確立されることが期待される.
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