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私は2005年5月までの2年間,Case Western Reserve Universityがあるオハイオ州クリーブランドで留学生活を送った.クリーブランドは五大湖の一番南にあるエリー湖に面している.春から夏の季節は過ごしやすいが,冬は極寒で,外へ出れば息をするのも苦しいほどであった.クリーブランドはスポーツや文化の盛んな町である.アメフトではブラウンズ,メジャーリーグではインディアンズ,バスケットボールではキャバリアーズなどアメリカ三大スポーツのすべてのホームチームがあり,またクリーブランドオーケストラなど,全米でも有名なオーケストラもある.そのオーケストラを何度か聴きに行ったことがある.世界中から有名なピアニストなどプロの演奏家を招き,クリーブランドオーケストラと一緒に演奏するのである.冬の凍えそうな寒い夜でも,老若男女を問わず音楽好きのアメリカ人はドレスアップをし,定期的に開催されるオーケストラを楽しみに聴きに来ている.毎回,演奏が終わると全員が立ち上がり拍手喝采である.「ブラボー!」がホールのあちこちから連呼され,盛り上がりは最高潮である.その場で演奏したピアニストやオーケストラもすばらしいが,200年ほど前にベートーベンが作曲したクラシックの曲などが,今でも多くの聴衆を魅了する.色あせることのないこの輝きとはなんだろうと思った.ほんの一握りのものだけが世紀を超えて残り,そして高く評価されるのである.
ジャンルは違うが,医学ではどうか.現代医学は日進月歩の進化を遂げているが,その背景には昔の医人の施した功績の積み重ねが基盤としてある.われわれの地元,和歌山出身の華岡青洲は200年前にマンダラゲ(真っ白な大きな花)を用いて,世界で初めて全身麻酔による乳癌の手術を成功させた.そのマンダラゲの花は現在,和歌山医大のシンボル(学章)となっている.自分がしている仕事や研究が果たして,100年後や200年後はどのように医学に貢献できるであろうか.自然淘汰される生物種のように消えていくかもしれないし,何らかの形で残っているかもしれない.“今は昔”になるのは間違いないが,未来の医療者や研究者たちの仕事につなげていけるような,色あせることのない仕事をしたいものである.(〒641-0012 和歌山市紀三井寺811-1)
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