トピックス 頭頸部領域の乳頭腫—その基礎と臨床
IV.口腔・咽頭の乳頭腫
八尾 和雄
1
,
高橋 廣臣
1
1北里大学医学部耳鼻咽喉科
pp.845-850
発行日 1997年11月20日
Published Date 1997/11/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411901680
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はじめに
口腔・咽頭領域乳頭腫の臨床病態は多様で,悪性腫瘍との鑑別が難しく,その被覆上皮の肉眼的特徴から診断されることが多い。発生原因としては,慢性刺激による上皮の過形成と述べた報告1,2)があるが,病態形成までには時間を要し,刺激源を明確にできる症例は少なく推測の範囲である。しかし,最近の病理組織診断技術の発達でウイルス感染3,4)がその発症の一因と考えられる症例が認められてきた。
今回は,1971年から1995年までに教室で経験した乳頭腫167症例を対象とし,その臨床的特徴と最近の14症例に行ったin situ hybridizationによるhuman papilloma virus (HPV) DNA検出結果を報告する。ただし乳頭腫の診断の定義は肉眼所見を第1として,淡桃色ないし白色で表面は乳頭状,花菜状を呈し,広基性,有茎性の隆起病変とした。さらに病理組織診断は,被覆上皮である重層扁平上皮は錯角化,過角化,有棘細胞層の肥厚を示し,隆起性あるいは分枝状で,基底細胞層の過形成による間質への乳頭状の肥厚,延長を認め,間質である結合組織の増殖が形態を決定している腫瘍性病変である。図1に典型例として70歳男性の肉眼所見と病理組織像を示した。
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