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Ⅰ はじめに
科学の進歩にしたがって,医学の興味の対象も徐々に変わってきた。疾病の診断や治療が進む一方,人体の本質的なものに改めてたいへん関心が持たれるようになってきた。そしてその代表が脳である。そこにはヒトの脳が非侵襲的に計測できる方法,すなわちニューロイメージングの研究が急速に発展したことにも促されたといえる。そういうなかで,脳活動の計測法として一番注目されているものに脳磁図(magnetoencephalogram:以下,MEG)がある。
聴覚においては,聴性誘発反応による脳磁図の作成は脳磁計開発の非常に初期から行われてきた。音刺激が耳から入ると,蝸牛の有毛細胞で刺激音は周波数分析され,神経信号となり蝸牛神経を経て脳幹へと伝わる。蝸牛神経核からの線維は,刺激側と同時に反対側の上行路,交叉線維など両側の情報が統合され,上オリーブ核,外側毛帯,内側膝状体と上行し大脳聴覚野へ至る。複雑に関係しながら多くは台形体を経て対側へ交叉するので,伝導は交叉性優位とされている。一次聴覚野は,組織学的には内顆粒層の密度が高く側頭葉横側頭回の内側2/3に位置する。それを取り囲むようにして,6つ程度の聴覚野が存在することがわかっている。その後方に位置する領域が側頭平面と呼ばれる部位で,優位半球においては言語理解にかかわる領域である。
つまり聴覚においては,一側耳の音刺激が両脳半球に伝わるという視覚や体性感覚とは違う,たいへん特殊な信号と反応が展開されている。しかし両脳半球の反応は必ずしも同一ではなく,MEGによりわずかな潜時の違い,活動場所や賦活程度の違いなどを測定することにより,左右半球の活動が同じではないことがわかった。本研究はその反応性の違いから聴覚の特殊性を検討,聴覚における左右脳半球の機能を分析しようとするものである。
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