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Impact factor全盛の時代,価値ある論文を有名な雑誌に載せることは,教授職という地位に昇るには不可欠に思えますが,毎日の仕事のなかで他科・他部門との連携を非常に完壁にこなせる医師は,周囲の人から重宝がられ,他科の医師からも信頼を受ける代わりに,雑用が多く苦労しがちな気もします。しかし,この教科書には載っていないスムーズな連携を行う技術は,患者さんに病状をわかりやすく説明し,やさしい気持ちで接することと同じくらい大切で,手術を短時間に上手に行うことや,学会でどんどん発表することより重要かもしれません。どんな社会でもお互いのコミュニケーションが肝心であり,私たちの職場ではそれが最近の頻発する医療事故の予防にもつながると思います。
小規模な総合病院で勤務しているなら,総合医局で麻雀でもしながら他科の医師と仲よくなって気軽に頼みごとができますが,大学附属病院のように規模の大きい場所では,他科や他部門の医師,職員の名前は知っていても顔はわからなかったり,名前さえも知らないことがあったりして非常に困ります。眼科は特に「ギブ」するよりも「テイク」する機会が多い気がします。例えば,糖尿病の患者でなるべく早く白内障ないしは硝子体手術をしたいとき,血糖コントロール状況を十分把握しないまま入院させ,手術前日に内科へ「いつもお世話になります。○×の手術を明日予定しているDM患者ですが,術前のご高診ならびに留意点などがありましたらご教示ください」などともっともらしい手紙を書いたはいいけれど,内科医師から,“こんなコントロールの悪い患者を明日手術するから今からコントロールっけてくれと言われても困る!”と怒られたり,心臓の悪い患者を循環器内科と麻酔科に相談することなく局所麻酔下で白内障手術をしようとして怒られたりした経験はだいたいの人はあるでしょう(僕だけかな?すみません)。これらの例はこちらのミスであって,もっと事前に入院前の時点で正しい対処が必要ですが,どうしてもというときはやはりあるもので,眼科が他科に頼まれて「ギブ」するより「テイク」するほうが多いでしょう。
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