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黄斑円孔は特発性あるいは外傷などによって起こる黄斑部網膜の円孔で,中心視力低下および歪視をきたし,さらに強度近視などで網膜剝離を発症した場合には強い視力障害を起こす疾患であり,1988年に発表されたGassらの報告をはじめとした多くの研究者の検討ならびに光干渉断層計(optical coherence tomography:OCT)の進歩と普及によって,その病態生理に関する理解が近年大きく進展したことは,皆さんよくご存じのことと思う。さらに,さまざまな手術手技の工夫や手術機器の進歩によって,手術成績も大きく向上し,現在,網膜疾患のなかでも手術治療効果がきわめて高い疾患の1つとして,多くの施設で治療が行われている。
本特集では,黄斑変性に関する最近の知見に関して第一線で研究成果を挙げられている先生方にご執筆を依頼した。上村昭典先生には後部硝子体剝離に際しての硝子体からの牽引を起因とする黄斑円孔の発生機序と病態の進行,そしてGass分類にOCT所見による新知見を加味したIVTS(The International Vitreomacular Traction Study)による新分類,さらに,それぞれの黄斑円孔の特徴や鑑別診断および疫学について解説いただいた。また,近年大きく進歩している手術手技に関し,黄斑円孔の術前術後評価法については馬場隆之先生に,内境界膜可視化のそれぞれの手法の特徴,利点,問題点と手法間の比較については東邦洋先生らに,最近難治性黄斑円孔に対する新たな治療法として注目されているinverted ILM flap techniqueの実際ならびに功罪については加瀬諭先生に,手術予後の向上とともにより患者の負担を軽減する方向に向かっている術後管理の最近の動向については厚東隆志先生に,そして見逃されがちな術後の視野障害の問題点について土屋俊輔先生らに解説いただいている。黄斑円孔の理解ならびに診療に際し,本特集を参考にしていただければ幸いである。
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