連載 眼の組織・病理アトラス・29
霰粒腫
猪俣 孟
1
1九州大学
pp.288-289
発行日 1989年3月15日
Published Date 1989/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410210650
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霰粒腫chalazionは瞼板腺の梗塞を基盤として発生し,マイボーム腺またはツアイス腺から放出された脂質に対する異物反応として起こる非化膿性の慢性炎症で,脂肪肉芽腫lipogranulomaを形成する。マイボーム腺の肉芽腫性炎症を深層霰粒腫deep chalazion,ツアイス腺の肉芽腫性炎症を表層霰粒腫superficial chalazionと呼ぶ。臨床的には,瞼板内に小腫瘤が形成され,通常発赤や圧痛もなく,皮膚との癒着もない。皮膚の上から半球状の腫瘤が触れる。急性に発症して発赤や腫脹を示すこともあり,その場合には急性霰粒腫acute chalazionと呼ばれる。霰粒腫に対し,瞼板腺の急性化膿性炎症は内麦粒腫internal hor-deolumと呼んで区別される。
霰粒腫の組織学的特徴は,脂質を中心に類上皮細胞や多核巨細胞の浸潤を伴った慢性肉芽腫性炎症を示すことである。すなわち,炎症細胞の集団のほぼ中央部に小円形の脂質とそれを貪食したマクロファージ,類上皮細胞,多核巨細胞,さらにその周囲にリンパ球や形質細胞の浸潤が見られる(図1,2)。パラフィン切片では,脂質は標本作成の途中で溶解してしまうので標本上では染色されずに抜けた小円形の空隙として観察される(図2,3)。組織の凍結切片を用いて脂肪染色すると脂質を染め出すことができる。
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