Japanese
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特別講演
老化と眼の機能
The visual functions and aging
市川 宏
1
Hiroshi Ichikawa
1
1名古屋大学医学部眼科学教室
1Professor and Chairman, Department of Ophthalmology, Nagoya University School of Medicine
pp.9-26
発行日 1981年1月15日
Published Date 1981/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410208239
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老化の生理的現象はひとの正常成長過程の延長線上にあり本来無自覚なものである。老化現象を臨床的手段で把えることは容易でないが,眼の生理機能における老化の尺度化は臨床上の基本的資料として今後ますます重視されるものと思われる。著者は視力の年齢的推移のデーターをもとに老化の眼の機能を次の三つのカテゴリーに分けて検討した。すなわちカテゴリー1は本質的加齢に関するもので,今日まで主にocular mediaの光学的要因が論じられてきたが,視力を測定する条件での加齢因子を,老人性縮瞳と水晶体の光学的濃度変化について検討し,網膜から中枢側ことに網膜機構内の加齢の存在を機能の面から明らかにした。カテゴリー2では血液網膜柵,特にそのouter barrierの脆弱化が推測される対象,すなわち高度近視限の柵機構と,白内障手術後の柵修復能(三宅)について硝子体内螢光濃度測定法による資料をもとに,柵機構に加齢が潜在する可能性を述べた。最後にカテゴリー3として眼疾を入居の条件としない特別養護老人ホームの入居者を対象にその臨床所見と剖検眼の光顕所見から,網膜後極部における脈絡膜萎縮と黄斑部網膜の萎縮性病変がはじめは互いに独立して発症しやがて共存して75歳を超える頃から老人特有の後極部病態を呈するに至る状況を述べた。
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