追悼
中泉行正先生を偲んで
三島 済一
1
1東京大学
pp.356
発行日 1978年2月15日
Published Date 1978/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410207603
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去る1月20日,アメリカのラスヴェガスで学会に出席中,中泉行正先生の御逝去の報に接した。第二次大戦後の日本眼科の歴史を築いて来られた先生を失い,日本眼科の1つの時代が先生と共に終つたとの感を禁じ得なかつた。五月に行なわれる国際眼科学会に対しても,多くのアドヴァイスをいただいたし,また先生の畢生の事業である一新会から,石原先生の色盲表を出品されることを楽しみにしておられたのに,後わずか3カ月ばかりのことで,この日本眼科の大事業を御覧になることができず,誠に残念なことである。
私が大学を卒業して眼科に入つた頃から,関東および東京眼科集談会や東大同窓会でお会いするたびに,激励の言葉をいただいたことを思いだす。何時もにこにこしておられ,若いわれわれに対しても,非常に丁寧で,腰のひくい先生で,話しかけられるたびに恐縮していた。当時若いわれわれには,先生の事業のくわしいことは知ることができなかつたが,研医会図書館を,どの大学にもない立派なものに完備されて,われわれのために提供されたり,日本の医学史に御造詣が深く,質問すると即座にくわしく教えて下さつたりしたことなどから,えらい大先輩として畏敬の念をいだいていた。何かを御願いすると,必ず非常に御丁寧な手紙が帰つて来て,その度に恐縮していた。
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