印象記 第65回日本眼科学会総会印象記
4.宿題報告
浦山 晃
1
1東北大医学部眼科
pp.778-780
発行日 1961年6月15日
Published Date 1961/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410207268
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私に課せられた印象記は,宿題報告についてであるが,3月に配布された講演抄録を開いて見たときに,電子顕微鏡関係演題のあまりに多いのに,あつと驚いたのは.恐らく筆者ばかりではあるまい。演題数からいつても,出題校数からいつても,まさに電顕ブームと称すべき今年度の,あまりにも日本的なこの現象は,果してほめられてよいことかどうか。それは別としても,このようなブームの中に迎えた第3日のシンポジウムは,多くの期待と関心を集めたとみえ,さしもの公会堂を満たした聴衆は終りまで席を立つ者もなく,本邦眼科医がいかに新知識の吸収に熱心で勉強家であるかを確かに物語つた。これは世辞や皮肉ではなく,本屋の打明ける所によると,眼科刊行物が他科に比べ,よく売れるという話の,恐らく嘘でないことが如実に窺われたからである。
超薄切片作成法の進展により,医学方面に急速な応用化がもたらされた電子顕微鏡的研究は,眼科領域では先ずトラコーマビールスの如き病原体の追究に採り上げられ,次いで眼組織の解明にその針路が向けられた。尤も専門の解剖学者等は,逸早く網膜などの徴細構造に就て立派な仕事をなしとげた。併しこれら先人の業績は,純形態学的にはいかに精確なものであつても,ある点では我々を満足せしめ得ないものがある。これは丁度,眼病理に就ても,専門の病理学者の解答が時に我々を納得せしめないものがあるのと同義である。
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