Japanese
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特集 網膜と視路の電気生理
ERGの基礎的研究,最近の動向
Recent Advances in the ERG Research
豊田 順一
1
Jun-ichi Toyoda
1
1慶応義塾大学医学部生理学教室
1Department of Physiology, Keio University School of Medicine
pp.81-86
発行日 1971年1月15日
Published Date 1971/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410204437
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I.ERGの波形とその要素
ERGの波形は,動物の種類,順応状態によつて変化するが,基本的な波としては光照射時に網膜の硝子体側が陰性になるa波に始まり,陽性のb波,暗順応時にのみみられるゆつくりとした陽性のc波,光遮断時にみられるd波などが知られている。この一見複雑な波形も,Granitの分析1)に基づいて,c波に相当するPI,b波を含む硝子体側陽性の成分であるPII, a波で代表される陰性成分のPIIIの三つの要素に分けて考えることができる。第1図はGranitの分析結果を示すもので,上のaに示されるのはカエルの暗順応時と明順応時,bはネコの暗順応時ERGを刺激強度を変えて記録したものである。図よりPIが暗順応時にのみみられること,PIIIは明順応時に著明となることが理解されよう。ネコなどすべての温血動物では,PIIIに比べてPIIが優勢であるが,カエル,サカナなどの冷血動物ではPIIIが著明であり,Granitは前者をE retina,後者をI retinaと名づけた。Eは興奮excitationを,Iは抑制inhibitionを表わしたもので,この事柄からもGranitがすでにPIIを網膜内の興奮過程,PIIIを抑制過程と結びついた要素と考えていたことがわかる。
さて,ここでこれらPI, PII, PIII要素の発生層に関する現在の一般的見解をまとめると次のようになる。
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