臨床実験
慢性軸性視神経炎の眼症状知見補遺—第1篇動視標に対する視認力
土屋 春雄
1
1山形鉄道病院眼科
pp.772-776
発行日 1955年5月15日
Published Date 1955/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410202217
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吾人が眼科学に於て視力と称するものは,視標が静止し,測定距離が一定し,一定したる条件に於て眼の分解能力を数値的に示したものである。斯かる検査が眼科学に於て持つ意味は基礎的である故に重要ではあるが,斯くの如く限定せられたる条件下に単なる分解能力だけを見るということは決して実生活に於ける「眼の働き」(視能:伊東教授,「視力」文部省学術研究会議第9部第7斑報告書77頁,昭22)を全的に表現するものではない。実生活に於ては斯かる分解能力よりも形態の認識が重要である。眼科学に於ては,視能を内容的に分析して或は視力,或は視野,或は光神,色神,屈折,調節,両眼視機,輻輳,開散等に区別して居るけれども,畢竟それは何れを一つ取つても基礎的のものではあるが,其の一つから視能を推定することは出来ないものである。故に,視能の観点から眼の働きを測定しようとすれば,之等の基礎的要素の二つ或は三つを同時的に結合して,一種の組合せ式に部分的結合を行いながらそれを総括して視能の大小を知るべきである。斯くして眼科学を人間生活に直接的に結びつけることが出来る。然るに従来は此の点を注意しなかつたから,視力検査を以て殆んど眼の働きを全的に表現するかの如く誤解して来たものである。
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