談話室
勉強の仕方,學會のやり方の研究(1)
弓削 經一
1
1京府大眼科
pp.413-414
発行日 1953年5月15日
Published Date 1953/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410201500
- 有料閲覧
- 文献概要
今の學界を見ていると,どう走つたら可いかも考えずに,只むやみに走つている様に思われる。走り方を考えていると,後れをとるので,方法の方は後廻しになつている様である。然し之ではやがて疲れてしまつて結局,大きな後れをとることになるにちがいない。
勉強の仕方を研究するといえば,當人は大いに進んでいる様に自負している様で面はゆいが,決してそんなわけではない。私が眠に疲れて,之は何とかしなければと思いついたからである。近頃の文献の數はまことにおびただしく,日本の眼科雑誌關係だけでも,原著のみで,今年だけでも既に600をこえている。之に學會抄録他誌掲載論を入れるとおびただしい數に上る。私のカード箱では,1951,52兩年合せるとピックアップした外國文献を加えると4.000枚をこえる。讀む可きものが餘りに多く,「何とかしなければなりませんなあ」と嘆ずる人が段々増して來た様である。人のやつたことを利用するのは,それだけ手間を省き自分の頭を廣げることになるので,之をうまくやる程進歩は早い。個人の學問的活動は集團に利用せしめることを目的としているのであるから發表,利用の方法に萬全を期し,少しでも有效にと心掛けなければならない事は當然であろう。學問と雖も大部分は凡人であるから。
Copyright © 1953, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.