臨床實驗
瞳孔閉鎖の前房針手術による治驗例
佐藤 勉
1
1順天堂醫大
pp.746-747
発行日 1951年11月15日
Published Date 1951/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410200992
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第1例 68歳女子兩眼虹彩後癒着を伴う續發白内障,兩眼共ウエンツエル氏法により水晶體摘出並びに瞳孔形成手術を行う。左眼は無事0.7の視力を得たが,右眼が瞳孔閉鎖となり,第1圖の如く上方に偏位した。そこで改めて瞳孔を造らなければならなくなつた。從來の常識ならばさしずめイリドカプスロトミーを行う所である。しかしこれは手術も小さくないし,加減のむつかしいものであるし,出血の危險もある。また硝子體を傷つけなければならぬ。もし第1圖の點線が示すようにかぎの手に瞳孔内のシユワルテだけを切ることが出來れば,虹彩も硝子體も傷つけずに充分な光線を眼底まで入れることが出來るはずである。
このような技術は余の前房針1)と余の角膜刀2)を用いて始めて實行し得る。(余の前房針による後發白内障手術の論文1)參照)第1圖のように耳側輪部より1mmほど内側の角膜に前房針を刺し(輪部より外方では小さい瞳孔領を刺すとき針が使いにくくなる)閉鎖している瞳孔の下端a點に先端を差込んだ。これを第2圖のように上方に動かして行くと,下方のシユワルテは軟いと見えて一部分は針の力で破れて來た。針の先端を充分上方へ廻してb點に達した時,そのまま送り込んでシユワルテの裏をとおつて,第3圖のP點へ到達せしめた。そこで先端を可及的に前房の方に向け,やや鏡い一突きを與えると先端がシユワルテを裏から表へ通して前房に出て來た。
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