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眼科医になって5年目,それまで一般眼科診療をしてきて白内障手術が一応できるようになり,今後どういう方向を目指そうかと考えていたとき,重症未熟児網膜症(retinopathy of prematurity:ROP)に出会いました。経験のある先生に来ていただき何度もレーザーをしましたが,その甲斐もなく網膜全剝離になってしまいました。その病院の新生児集中治療室(neonatal intensive care unit:NICU)は規模が小さく,在胎25週以上しかいませんし,レーザーに至った児も年2人しかいません。双眼レーザーはなく,治療のときだけ借りていました。私は以前,非常勤で行っていた小児病院でROP診療はしていましたが,上の先生と一緒に診ていたので自分で真剣に判断していませんでしたし,レーザーの経験もなく,重症患者を前に自分ではどうすることもできませんでした。重症なことがわかっても早産児を簡単に転院させることもできず,眠れない日々を過ごしました。それがきっかけでROP診療をしっかり学べるところへ行こうと思い,平岡美依奈先生に師事しました。
墨東での診療はそれまでの病院と違いました。在胎21週・22週の双胎・23週の品胎(三つ子)など驚くほど未熟な子がたくさんいました。特注の未熟児鈎・カプト点眼・RetCamなどが揃っており,特注の未熟児鈎では通常の鈎ではうまく押せない鋸状縁付近まで見えます。散瞳もミドリンP®とカプト点眼では全然違います。またRetCamで記録できる意義は大きく,混濁して眼底が見えなくてもRetCamには写っていることがよくあります。良好な治療成績を得られるのはこれらの道具のおかげも大きいと思います。そして小さな眼球の混濁して見えない眼底に正確にレーザースカーが入ることに驚きました。
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