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はじめに
緑内障診療ガイドライン(第2版)によると,緑内障の定義1)は,「視神経と視野に特徴的変化を有し,通常,眼圧を十分に下降させることにより視神経障害を改善もしくは抑制しうる眼の機能的構造的異常を特徴とする疾患」である。つまり,緑内障性視神経症(glaucomatous optic neuropathy:GON)および緑内障性視神経症による視野異常をいかに早期に検出するかが,緑内障診断において重要であることが読み取れる。
初期緑内障の特徴的な視野異常は,「傍中心暗点」「鼻側階段」「Bjerrun暗点」などであるが,なぜ緑内障ではそのような視野異常を呈するのか,さらにはなぜ緑内障では,他の視神経疾患などとは異なる視野異常を呈するのか。それは緑内障性視神経症の発生機序と関係があると思われる。網膜神経節細胞のアポトーシスや乳頭部でのアストロサイトの活性化などは,他の視神経疾患でも同様の機序が関与しているとされ緑内障に特異的とはいえないが,近年,緑内障性視神経症の発生機序として,乳頭部の細胞外マトリックスのリモデリングと神経節細胞死の関係が指摘され,今後の研究の進展が待たれる。緑内障における構造(structure)の変化は,画像解析装置が進歩した現在でも検出不可能な時期があるし,さらには構造の変化は視野検査など機能(function)の変化に先行することが報告2)され,このような構造的変化と機能的変化の乖離が緑内障の診療の1つの問題点でもある。
“Pre-perimetric”期,あるいは“pre-perimetric glaucoma”の明確な定義はないが,現時点では,「構造的な変化は認めるが,通常の視野検査では障害が検出される前の極早期の緑内障」と一応定義される。緑内障は進行性の疾患であるから,少しでも早期に進行を抑制する必要があり,前述のように,緑内障に特異的な構造の変化の研究が進められる一方で,検出感度を向上させた画像解析装置の開発が進められ,さらにはそのような構造的な変化をいち早く検出可能な新しい視野検査など機能検査法の開発も進められ,極早期での緑内障の検出が試みられている。
視神経乳頭を主とする眼底の画像解析装置としては,走査レーザーポラリメーター(GDx),共焦点レーザー検眼鏡(HRT Ⅲ),光干渉断層計(OCT)などの機器の有用性が報告されている。また,視野検査としては,早期診断を目的として短波長自動視野測定(short-wavelength automated perimetry:SWAP),フリッカ視野,FDT(frequency doubling technology perimetry)などが開発された。
以上のような画像解析装置による構造的検査と視野検査による機能的検査の検出において,現時点では初期には構造的変化に対する画像解析装置で,末期には機能的変化に対する視野検査で検出感度が高いといえる(図1)。
本項では,SWAP,FDTを中心に視野検査における早期発見の試みを概説する。
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