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はじめに
再生医療は21世紀の新しい医療として注目されており,眼科領域は自家の角膜輪部細胞や口腔粘膜を用いた角膜上皮の再生医療がすでに臨床応用されているのをみてもわかるように,世界をリードする立場にある。網膜,視神経,緑内障,角膜(実質・内皮)などの分野においても多くの優れた研究が精力的に進められており,今後は臨床応用を目指した研究が急速に進むと期待されている。
新規の治療法の開発に至るまでは,基礎研究,前臨床試験,臨床試験というステップを踏んでいくものであるが,これまでは眼科における再生医療についての情報交換や最新の成果を発表する場が少なく,いい基礎研究があってもそれらを包括的・効率的に前臨床試験や臨床試験にまで成熟させることが難しかった。これらの問題点を解決するために,平成20年度から,文部科学省の「橋渡し研究支援推進プログラム」が開始された。これは,医療としての実用化が見込まれる有望な基礎研究の成果を開発している研究機関を対象に,シーズの開発戦略策定や,薬事法に基づく試験物製造のような橋渡し研究の支援を行う機関を拠点的に整備するとともに,これら拠点の整備状況を把握し,拠点間のネットワーク形成などによりサポートする体制を整備するために,全国で6つの拠点と1つのサポート機関を整備することを目的としている。このように,基礎研究成果が臨床応用されるための環境は国からも支援されており,再生医療が臨床応用されるチャンスは今後ますます大きくなっていくものと思われる。
一方で,無秩序な臨床研究を規制するために,2006年9月から「ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針」が厚生労働省より施行され,ES細胞やiPS細胞のみならず,ヒト幹細胞を使用する臨床研究はすべて厚生労働大臣への報告と承認が義務づけられるようになった。また,ヒトに使用する医薬品についてはGMP(Good Manufacturing Practice)対応のものが求められたりと,ヒトへの臨床応用を目指すためには研究段階からこのような法的環境を理解しておくことが非常に重要であるが,これらのことはとても一人の研究者のみで理解し解決していけるレベルではなくなっている。
本研究会では,これらの問題を解決すべく,眼科の再生医療に関する有益な情報交換の場と最新の研究成果を発表できる場をつくることを趣旨として,昨年から新しく始まった専門別研究会である。
再生医療においては組織工学とも密接に関連しており,生体材料との関連も深いことから,本年も昨年と同様に「日本眼科生体材料および再生医学研究会」と合同で開催する研究会とし,合計180分のプログラムのうちの半分である90分を眼科再生医療研究会が担当した。
今回の研究会では,講演を一般演題と特別講演に分けて行った。一般講演には眼科の再生医療に関する質の高い演題が5演題登録され,質の高いディスカッションが行えた。
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