今月の臨床 一歩先行く超音波胎児検診
妊娠初期
1.見逃しやすい異所性妊娠
本田 育子
1
1山王病院リプロダクションセンター
pp.560-563
発行日 2001年5月10日
Published Date 2001/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409904326
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経腟走査法による超音波検査の経験を重ねることで,妊娠初期異常妊娠の診断率は上昇したが,悲惨な転帰を迎える前の診断に苦慮する症例も少ないながら依然として存在する.超音波装置の進歩によって検出精度は向上したが,検者の診断能力が,胎嚢に心拍を有するような卵管妊娠の診断はともかくとして,異所性妊娠のさまざまな経過,転帰を画像から把握できないこともある.間質部妊娠,頸管妊娠,内外同時妊娠の早期診断では,子宮腔内の胎嚢の有無にかかわらず,卵管,間質部,頸管部を日常的に観察することが必要である.特に今日,不妊治療を目的に広く過排卵刺激法が行われている現状では,多胎妊娠出現(着床部位)の組み合わせは多彩である.子宮腔内の胎嚢の検出は子宮外妊娠を否定,除外する重要な指標ではあるのだが,過排卵周期では,子宮腔内に1つの胎嚢をみただけでは不十分で,習慣的に子宮全周を観察し,子宮腔内の他の胎嚢,異所性妊娠の有無を確認することが必要である.また妊娠6週や7週のルチン検査で異常妊娠を診断できなかったときでも,患者が疼痛などの症状を訴えたときには,必ず発症の可能性を念頭において検査を行うことが早期診断のポイントである.発症を肯定的に考えるのと,否定的に考えて検査を行うことでは,はじめから診断率に差が出る結果となる.
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