今月の臨床 性感染症—胎児から癌まで
性感染症の最新の治療法
4.HIV感染症
照屋 勝治
1
,
岡 慎一
1
1国立国際医療センターエイズ治療・研究開発センター
pp.72-75
発行日 2001年1月10日
Published Date 2001/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409904235
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はじめに
1981年に突如出現したHIV感染症は瞬く間に世界中に蔓延した.1987年まではHIVに対して有効な薬剤は皆無であり,患者はAIDS発症後平均1〜2年で死亡していた.1987年のAZTを皮切りに抗ウイルス剤が次々と開発され治療に用いられるようになったが,1996年までこれらの薬剤の単剤治療は一次的な改善をもたらすものの,急速に耐性が獲得され,患者の生命予後を改善することはできなかった.しかし1996年に米国の臨床試験ACTG 175にてAZT+ddIやAZT+ddCなどの併用療法が明らかな延命効果と発病阻止効果をもたらすことが示された.さらに1995〜1996年にかけてプロテアーゼ阻害剤(PI)が登場し,1996年以降はこれらの薬剤と2種類の逆転写酵素阻害剤(NRTI)を組み合わせたHAART(highlyactive antiretroviral therapy)と呼ばれる3剤治療が行われるようになった.それ以後HIV感染者の死亡率とAIDS発症者数,日和見感染症罹患率の劇的な減少を認め,HIV感染症は治療可能な疾患として新たな展開を迎えたといえる.しかし一方で耐性ウイルス出現の問題,抗ウイルス薬の長期的副作用の問題などがクローズアップされるようになってきている.
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