今月の臨床 新生児外科の最前線—産科医としての必須知識
外科治療の現況と産科医へのアドバイス
3.腹・背部疾患
1)臍帯ヘルニア・腹壁破裂
河原﨑 秀雄
1
,
水田 耕一
1
,
橋都 浩平
1
1東京大学医学部小児外科
pp.261-265
発行日 2000年3月10日
Published Date 2000/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409903959
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概念と発生病因
臍帯ヘルニアomplaJoceleは,腹腔内臓器が臍輪から腹腔外に脱出している状態で,羊膜と腹膜で形成される薄い半透明のヘルニア嚢で被覆されている場合と,ヘルニア嚢が破れて腹腔内臓器が体外に直接脱出している場合がある.腹壁破裂abdomial wall defectsは,腹壁の裂孔から腹腔内臓器が被覆する被膜を伴わず,直接体外に脱出している状態で,通常は臍帯の右側に裂孔があり,裂孔と臍帯との間には正常な皮膚が橋状bridgeに存在する.以後,両疾患を本疾患とよぶ.本疾患の発生頻度は出生数5,000に対して1と報告されている.20歳以下の若年者が母親の場合は腹壁破裂1)が,40歳以上の母親の場合は臍帯ヘルニア1,2)が多い傾向がある.
臍帯ヘルニアの発生病因は,腹壁形成不全説と,腸管還納障害説がある.胎生初期(胎生3〜4週)における胎児の体壁形成は,上下左右の4つの皺襞fold(頭側皺襞と尾側皺襞と左右の側皺襞)が側方から中心に発育して,中央の臍部において癒合することで完成するが(図1)3),この皺襞の発育が悪く腹壁の形成が障害されると,各病型の腹壁形成異常が発生する.これが腹壁形成不全説である.この場合は比較的大きな臍帯ヘルニアを生じ,脱出臓器は小腸の他に,胃,肝,脾を含む.
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