今月の臨床 妊娠初期を診る
初期異常への対応
6.重症悪阻—ビタミンB1欠乏とWernicke脳症
澤 倫太郎
1
,
荒木 勤
1
1日本医科大学産婦人科
pp.1090-1092
発行日 1997年10月10日
Published Date 1997/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409903064
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
妊娠初期に起こる消化器症状をつわり(emesis)または妊娠嘔吐(vomiting of pregnancy)といい,妊娠5〜6週から発症し,通常は積極的な治療を必要としないで,妊娠20週までには軽快する.一方,妊娠悪阻(hyperemesis)は,つわり症状が悪化し食事摂取が困難となり,妊婦に栄養障害や代謝異常をきたし加療を必要とする状態をさす.
加療は絶食,輸液療法が中心になる.しかし治療抵抗性の重症妊娠悪阻では頻回の嘔吐,食事摂取不能による母体の代謝異常に加え,多量のブドウ糖輸液によりビタミンB1の消費を招き,Wer—nicke-Korsakoff症候群の発症から,ときとして重篤な神経学的後遺症や妊産婦死亡につながるケースもあるので慎重な管理が必要となる.
Copyright © 1997, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.