今月の臨床 子宮全摘出術—私のコツ
広汎性子宮全摘出術
18.尿管瘻の防止対策
高村 郁世
1
,
針生 秀樹
1
,
西谷 巌
1
Ikuyo Takamura
1
1岩手医科大学産婦人科
pp.188-190
発行日 1993年2月10日
Published Date 1993/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409901186
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広汎性子宮全摘出術後の尿管瘻は,術後合併症として,患者自身は言うまでもなく,術者にとっても予測できない最も残念な事故の一つである。尿管瘻の発生原因に関して,古くから多くの研究報告があり,尿管壁損傷説,栄養血管障害説,尿管通過障害(圧迫,屈曲,狭窄)説,炎症説など特定できないため多くの原因があげられているが,小林,三谷らの提唱した,尿管外膜の損傷を主因とみなし,他は促進因子と考えるのが妥当のようである。
従来から,尿管瘻の予防法として尿管を骨盤死腔から回避させ,骨盤壁への癒着による屈曲を避けるため尿管腹腔内露出法(遠藤),尿管腹膜包埋法(大川)などの報告がある。浸出物,異物,炎症など,骨盤死腔の悪い環境から尿管を隔離する意義は認められるにしても,二次的な要因と思われる。その他,副子尿管カテーテル挿入法,栄養血管の保護などが報告されている。尿管瘻の好発部位は,つねに尿管前部すなわち,子宮動脈との交叉部から膀胱進入部までの尿管が,膀胱子宮靱帯の前層,後層に包まれた部位にかぎられており,進行期がすすむほど,また,術者が未熟な経験者であればあるほど,多発することから尿管前部の浸潤,癒着などの条件と剥離技術の巧拙に大きな因果関係があることは確かである。
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