今月の臨床 妊産婦と薬物治療─EBM時代に対応した必須知識
Ⅱ.妊娠中の各種疾患と薬物治療
1.日常的な突発疾患の治療と注意点
[腎・泌尿器系疾患] 頻尿,尿失禁
伊庭 敬子
1
,
松尾 重樹
1
,
松本 雅彦
2
1大阪市立総合医療センター産婦人科
2都島保健センター
pp.444-445
発行日 2005年4月10日
Published Date 2005/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409100229
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1 診療の概要
頻尿は妊娠中よくみられる現象で,これは妊娠中の排尿パターンの変化によると考えられる.プロゲステロンの作用により膀胱平滑筋は弛緩し,妊娠16週ごろには排尿間隔と尿意切迫感が遠のくことが多い.一方,妊娠週数が進むと,増大した子宮により膀胱が圧迫されて逆に頻尿となる.また,膀胱炎,腟炎により頻尿がみられることがある.
尿中細菌数が105/ml以上存在するにもかかわらず症状の認めないものは,無症候性細菌尿と定義されており,健常婦人の0.5~1.0%にみられるが,妊婦では3.5~4.9%に認められる.妊娠した場合は,それまで無症状であった細菌尿が,尿路の刺激症状を出すことが多いといわれる.急激な膀胱炎症状(排尿時痛,頻尿,尿混濁)を呈した場合は診断が容易であるが,膿尿・血尿などを伴わない軽度の頻尿,尿失禁,排尿違和感がみられた場合は,無症候性細菌尿が顕在化したことを念頭に置き,治療することが必要である.この場合,治療の基本は十分な水分摂取と抗菌薬の投与である.抗菌薬は,胎児への影響が少ないペニシリン系やセフェム系などのβ─ラクタム剤を7~10日間,経口投与する.
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