境界領域の再評価とその展開 特集
産婦人科と眼—専門医にきく
下垂体腫瘍と視野異常
松尾 治亘
1
Harutake Matsuo
1
1東京医科大学眼科学教室
pp.633-641
発行日 1987年10月10日
Published Date 1987/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409208159
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I.両耳側半盲の現われ方
下垂体腫瘍によっておこる視野異常は,即両耳側半盲とされ,模式図的には図1の如く示されている。しかし,実際上はこの図のような形で異常が現われることは少なく,特に視野計の視標をいくつかの大きさ(面積),明るさ(輝度)をかえて測定して得られる量的視野では別の形を示すことが多い。これは初期の変化を把握することができるようになったからである。また,下垂体とその上部に接している視交叉(視神経交叉)の解剖的位置から必ずしも模式図の如く左右対称的な変化を示すものではない。その1例を次に示す1)。
患者は37歳女性で,左眼の視力低下を訴えて受診した。視野は図2に示す如くである。レ線上,下垂体異常の所見があり,開頭術が行われた。腫瘍が左視神経の下内側に増殖し,視神経を外方に圧排している所見が得られた。術後2カ月して,左眼の半盲は上耳側の4分の1半盲という形まで回復,右眼の上耳側にあった暗点も消失した。
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