境界領域の再評価とその展開 特集
産婦人科に必要な形成・整形外科の知識
整形外科的疾患による骨盤・関節機能異常と分娩
荒木 日出之助
1
,
橋本 英昭
1
,
植村 和幸
1
,
田原 裕子
1
Hidenosuke Araki
1
1昭和大学藤が丘病院産婦人科
pp.801-804
発行日 1987年12月10日
Published Date 1987/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409207696
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一部骨一部軟骨からなる新生児骨盤が成人骨盤に発育するまでの過程は,単なる加齢に伴う骨の成長や化骨の進行だけではなく,形態的にも大きな変化がみられる。すなわち,新生児骨盤の仙骨岬は存在するがその位置は高く,骨盤傾斜は大きい。また仙骨全体は上下に真直ぐであり,腸骨翼も垂直である。恥骨上枝は一般に短く,恥骨弓は角ばっていて,骨盤腔は入口から出口に向かってだんだん狭くなる漏斗状を呈する。これに対して典型的成人女性型骨盤の特徴は,入口は円形もしくはやや横楕円形で広く,仙骨は幅広く,その前面は弓状に凹彎曲している。腸骨翼は扁平で斜走し,恥骨弓はアーチ状で開角は広い。このような変化の過程には,先天的素因が大きく関与しているであろうが,その他,起立歩行開始後の躯幹・下肢などから加わる力の影響,骨形成に関係する栄養学的影響,思春期にみられる各種性ホルモンとくにエストロゲンの影響なども複雑に絡みあっていることは想像に難くない。さて以上の骨盤形成時期に脊柱・骨盤・下肢などの骨または関節の疾患に罹患し,後遺症として運動障害や変形を残す場合は二次的に骨盤変形をもたらし,将来,分娩障害の原因になることは古くから知られている。しかし今日では骨盤変形をきたすような先天的股関節脱臼は早期に発見され,整復的処置がとられたり,昔みられた結核を主とした各種の骨盤骨関節疾患・脊椎疾患,特殊な栄養障害であるクル病などはきわめて稀になった。
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