臨床メモ
胎児の尿路閉塞に対する子宮内治療
貝原 学
1
1東大分院産婦人科
pp.721
発行日 1982年9月10日
Published Date 1982/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409206693
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胎児に認められる異常のうち,ある種のものは,胎児の時期から治療を開始することによって,児の予後が著しく改善されることが知られている。Rh式血液型不適合による胎児溶血性貧血に対して,胎児の腹腔内へ赤血球を輸血する方法は,その代表的な例であり,その他に,胎児のメチルマロン酸尿症に対して母体に大量のビタミンB12を投与する方法1),胎児の甲状腺機能低下症に対して羊水中にサイロキシンを投与する方法2)ならびに胎児の発作性頻脈に対して母体にジゴキシンを投与する方法3)などをあげることができる。
解剖学的な異常(奇形)が胎児に存在する場合についても,それを胎児の時期に治療すれば予後を改善することができる場合も想定されるが,胎児の時期に診断すること自体が極めて困難であり,治療とはほど遠いのが実情であった。しかし,最近の超音波による診断技術の発達に伴い胎児の奇形のあるものは比較的容易に診断することができるようになった。胎児の尿路系の閉塞性疾患はその一例であり,胎児期に発見される率が増加しつつある。
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