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超音波断層法による胎児腎異常の分娩前診断
田部井 徹
1
1国立病院医療センター・産婦人科
pp.747
発行日 1977年8月10日
Published Date 1977/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409205672
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超音波断層法は,生体構造の描写観察法であり,産科領域では胎児・胎盤などの形態学的診断に偉力を発揮する。さらに最近では,電子高速走査法が実用化され胎児の形態のみならず動態観察も可能となった。また階調性超音波断層法の発達で,その断層像は格段に読みやすくなり,情報量の多いものになっている。すなわち,胎児数,児頭の大小,躯幹四肢など胎児形態の観察に加えて,胎児の内臓器官や軟部組織の形態学的異常までも分娩前に診断することが可能になってきた。
1970年,Garret1)らは階調性超音波断層法により,妊娠31週の胎児について多嚢胞腎の存在をすでに妊娠中に診断することに成功した。さらに,彼ら2)は2例の先天性胎児尿道障害を発見し得たと述べている。二例とも超音波断層の胎児横断像で巨大尿管および膀胱拡張像が示され,うち1例は母体の静脈性腎盂造影法を行なうと,胎児に明白な両側性の水腎症が証明されたという。以上のごとく,胎児尿道の機能的,器質的障害による腎盂の異常な拡張は,超音波断層法では拡大像として認められる。これに反して,胎児の両側腎が先天的に欠損していると,階調性超音波断層法では胎児腎部における影像の欠如として示されるであろうし,従ってその診断も可能である。
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