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胎盤性Sulfatase欠損症と尿中エストロゲン
矢内原 巧
1
1昭和大学医学部産科婦人科学教室
pp.371
発行日 1977年4月10日
Published Date 1977/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409205607
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近年,測定法の進歩とともに,胎児管理の目的で妊婦尿中estriol測定が一般化されつつある。妊娠中のestriolの生成には胎盤のみならず胎児副腎,肝の関与が大きく,従って尿中estriolの測定は胎児—胎盤系の機能を判定することを意味し,この生成機序に関して多くの研究がなされた。すなわち,胎児副腎はDH A-sulfateを分泌し,これは副腎または胎児肝で16α hydroxylationを受け,16αOH-DHA-sulfateとなり,さらに胎盤で芳香化を受けてestriolが生成される。事実臍帯血中にはDHA-sulfate,16αOH-DHA-sulfateが多量に存在しまた,胎児副腎が極度に萎縮した無脳児妊娠では母体血中尿中のestriolは著しく低値を示す。従って尿中のestriol値は胎児自体の副腎機能を強く反映することとなり,胎児がその生活力を失いつつある場合,または胎盤自体の機能が障害をうけている場合にはestriol値は低値となる。
従来,低estriolを示す場合は妊婦が大量のcorticoid投与を受けた場合を除いて,(1)子宮内胎児死亡またはfetal distress (2)無脳児妊娠,(3)胎児副腎の発育不全,(4)母体腎障害等が考えられた。
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