連載 リプロダクション講座・15
妊婦の造血機能
真田 浩
1
Hiroshi Sanada
1
1岡山大学医学部中央検査部
pp.741-746
発行日 1976年9月10日
Published Date 1976/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409205478
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妊娠時の末梢血液所見の変動に関しては,以前からはなはだ多くの検索が行なわれており,妊娠水血症と考えられていたいわゆる生理的妊娠貧血の大部分は,鉄欠乏性貧血であることが明らかにされている。この貧血は適切な治療により正常化することができ,分娩時合併症の軽減に役立つ。妊娠は生理的現象であるが,内分泌機能その他に著明な変化を伴っており,末梢血にも造血器にもそれに応じた変化が現われてくる。特に体重増加による循環血液量の増加,胎児への造血物質の供給,ホルモン環境の変化が造血機能に大きな影響を与え,妊娠前には潜在性の状態であった障害が妊娠中にしばしば顕在化してくる場合がある。造血機能は赤血球系,白血球系,血小板系の3系統に分けられるが,妊娠時に最も大きな影響を受けるのは赤血球系であり,その異常による貧血が最も多い。しかし3系統ないし白血球系または血小板系に異常が認められる場合もある。造血機能の判定をする場合,単純な鉄欠乏性貧血以外の疾患では3系統に関する検査と骨髄の検査が必要であり,さらに適当な特殊検査を行なわねばならない。妊婦にみられる血液疾患の主要なものは表1に示す疾患である。
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