疾患の病態と治療 感染症--最近の動き
産婦人科領域における敗血症をめぐつて
寺尾 俊彦
1
,
石塚 直隆
2
Toshihiko Terao
1
,
Naotaka Ishizuka
2
1浜松医科大学産婦人科学教室
2名古屋大学医学部産婦人科学教室
pp.99-105
発行日 1976年2月10日
Published Date 1976/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409205361
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本邦の感染による妊産婦死亡率は,消毒法の普及,抗生物質の発達とともに,次第に減少してきた。厚生省統計によれば,妊娠に伴う敗血症による死亡は,1972年では出生1万に対し0.2であり,総妊産婦死亡4.1の中で,その占める割合は比較的少ない。しかし現在でも,産褥熱が以然としてfatal diseaseであることには変わりはない。米国では,1969年の総妊産婦死亡2.2の中で0.4とその占める割合が多く,その大部分が流産に関連する敗血症(septic abortion)による死亡である。Pritchard1)(1971)によれば,1955年から1970年までに敗血症性流産の患者を毎年平均130例取り扱い,総計2100例を入院治療し,うち12例が死亡し,うち5例がClostridium perfringensによる死亡という。われわれ日本の産科医には信じられないような数字であるが,米国では不潔な堕胎による敗血症が非常に多く,米国の妊産婦死亡の第1原因が感染であり,しかも流産に関連した感染による死亡が最も多い。そのために,最近米国各州で中絶法が改正され.病院における中絶が増加するとともに,感染による死亡が減少しつつある(Stewart2),1971)。
最近の産褥感染症の特徴は,その起炎菌がかつてのStreptococcus,StaphylococcusからE.coliを始めとするグラム陰性桿菌に変つたことである。
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