臨床メモ
骨盤位分娩の児に起こる外傷
竹内 久弥
1
1順天堂大学医学部産婦人科
pp.665
発行日 1972年8月10日
Published Date 1972/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409204652
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頭位分娩に比べ骨盤位分娩では児の死亡率が経腟分娩で2〜3倍も高いことは周知の事実である。その原因には多くのものが挙げられているが,当然のことながら避け難いものと避け得べきものとがあり,後者の最大の原因は牽出術の未熟による児の外傷であろう。
骨盤位分娩の児に起こる外傷の臓器別頻度は,高いものから脳脊髄,肝,副腎,膵の順とされ,消化管や泌尿器系の損傷は稀である。E.S.Tankら(Obst. & Gynec.38:761,1971)はMichigan大学における過去15年間にわたる900例の骨盤位分娩を検討しているが,その結果はやはり従来の報告通りであつた。すなわち,正常な児で牽出直後に死亡したものはわずか6例に過ぎなかつたが,そのうち半数は臍帯脱出による仮死から死亡したもので,残りの3例が外傷性であつた。その外傷はすべて大脳天幕の破綻による頭蓋内出血で,遷延分娩と牽出困難が伴なつていたという。天幕の破綻と頭蓋内静脈の破裂は頭蓋の過度の圧迫によるものであり,CPD,微弱陣痛,余りに急激な後続児頭の娩出などがその原因となることから,CPD診断と牽出術に対する医師の熟練が要求されることになる。
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