特集 人工妊娠中絶術
人工妊娠中絶術の偶発,合併症対策—とくに子宮損傷の症例について
下村 虎男
1
,
安藤 暢哉
1
,
中野 孝
1
,
久本 洋文
1
Torao Shimomura
1
1北野病院産婦人科
pp.543-548
発行日 1971年6月10日
Published Date 1971/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409204424
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はじめに
健康な婦人が無計画に妊娠分娩を繰返していると一生に何人の子供を産みうるであろうか。最近の関西の一夕刊紙には南米チリーの一農婦が61歳で23人目の男児を安産し,これに立会つた医師は今の身体状態からみるとさらに1〜2人の出産が可能であろうと報じている。広大な南米の天地ではこうした人生もさほど珍しくはなさそうだが,一方同じチリーの調査報告1)によると20歳から49歳までの女性の抽出調査では4に1人の割合で1回から最高35回の堕胎が行なわれ,その首都サンチァゴにおける堕胎の1/3が合併症のために入院を余儀なくされている由である。
多産と貧困とは戦後の東南アジアの大問題であり,前記チリーをはじめ南米諸国では堕胎に関する法律が非常に厳しく,医師はこの問題を回避しているので,非医師による非合法堕胎が多く行なわれることのためにその障害が多いものと論ぜられている。
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