特集 人工妊娠中絶術
人工中絶の問題点について
内田 一
1
Hajime Uchida
1
1内田病院
pp.533-536
発行日 1971年6月10日
Published Date 1971/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409204422
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はじめに
人工中絶の適応は,日本国内の問題にしても戦後食糧事情の逼迫,住居のとぼしさ,すなわち,国全体の貧困さとともに現在われわれが生活している繁栄に到るまでのその間に,国の変化とともに多少の変化はしてきたが,一方すくなくとも国の人口政策としての一環の役目もはたしてきたが,それは決して正しいことではない。現在わが国における働く年齢層の少ないということは,20数年前の戦後のあの無秩序であつた人工中絶の結果が,今日のしからしむるところであるし,今後もこの失敗を繰り返してはならぬ。したがつて人工中絶は家族計画の一環として用いられてはならないし,あくまでも医学的な適応に基づく,すなわち人命を断つというそれに対する大きな代償が存在しなくてはならない。この点からも必ず配偶者ならびに,それに相応する人の同意を得ねばならないことはもちろん,未婚の女性の場合は,少なくとも同意書の他にその婦人の両親の承諾を得て行なうことは,本人の将来のためにも非常に必要なことである。夫の同意書のない人工中絶は違法であるし,未婚女性の相手の男性および本人の両親の承諾のない人工中絶も同様に道徳的違法として考えてもよいと思う。
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