薬の臨床
妊娠貧血に対するHOD−27の使用経験
外山 順一
1
,
菅原 俊也
1
,
山口 博敏
1
,
黒沢 正憲
1
Junichi Toyama
1
1昭和大学医学部産科婦人科学教室
pp.75-78
発行日 1970年1月10日
Published Date 1970/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409204153
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はじめに
妊娠時における血液の変動については,最初にNasse1)がこれに着目て以来,多くの研究がなされ,妊娠性血球増加説2),血液不変説2),減少説3)4)等の諸説があげられ,またその成因に関して定説がみられなかつた。しかし,妊娠貧血の大部分は生理的妊娠貧血と呼ばれ,その原因を妊娠後半の水血症に求められていたが,Schulten,Gol-deck6)らによる鉄代謝の研究が進められてより,本邦においても館7),尾河8),志多9),河方10),本郷11)らが,鉄欠乏が妊娠貧血の発生に重要な役割を演ずることを明らかにし,さらに昭和40年古谷12)が第17回日本産科婦人科学会総会の宿題報告として,わが国における妊婦の貧血に関しての広汎な研究を発表し,妊婦の栄養の改善,とくに鉄の補給が分娩後の婦人に多くみられる鉄欠乏貧血を著しく改善し得るとしてより,妊婦の貧血に対して多種にわたる経口鉄剤投与によるその治療が行なわれてきた。
我々も昭和39年以来,妊婦貧血研究会の一員として,種々の鉄剤投与による妊娠貧血の治療を行なつて来たのであるが,今回東洋醸造株式会社より,メチル-B12製剤であるHOD−27の提供を受け,妊娠貧血に対するその影響を観察し,さらにHOD−27と他の経口鉄剤との併用投与についても若干の検討を行なつたので,以下報告する。
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