連載講座 胎盤から学ぶ・1【新連載】
胎盤の検査法
相馬 広明
1
1東京医科大学産婦人科
pp.725-727
発行日 1963年9月10日
Published Date 1963/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409202885
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「分娩後,胎盤の検査を自分の手でしますか,それともほとんどその検査は助産婦に任せきりですか。或いはそのまま放置して検査はしませんか」という質問を産科医の一人一人に訊ねたとすれば,正直にいつて現状では,自分の手で必らず胎盤の検査をしているといい切れるドクターは,まず極めて少ないのではなかろうか。私自身もBoston Lying-In Hospitalで,Dr.Benirschkeに指導されるまでは,胎盤の検査については,全く粗雑な知識しか持たなかつた。
これは万人の認める胎盤に対する妊娠中の内分泌学的な価値は別として,胎盤そのものについて,誰しも子宮内での胎児の栄養器官としての意義を認めていても,従来の胎盤に対する本邦での産科学の取扱いは,単なる後産として胎児の附属物の域を脱せず,或いは児に比べてはWaste-basket式な扱いようであつたことに,胎盤軽視の傾向を生じたと考える。そしてこれが胎盤検査への興味を削減させていたとも考えられる。そのため胎盤の検査項目も一応分娩記録欄には記載されてあつても,たとえば主としてその重量や臍帯の長さにのみ終始して,いわば胎盤のもつ宝庫を掘り出すような検査法が施行されていなかつた。
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