文献紹介
胎盤血の新生児輸血,他
pp.476
発行日 1963年6月10日
Published Date 1963/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409202829
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胎外へ出た新生児が,胎児期と機能上著しく異るのは,呼吸と循環とであろう。胎外へ出るや否や肺は拡張(大体60%)し,肺血管床が増加(循環量の20%)する。この血液量は出産数分以内に胎盤血から補給される。それは子宮収縮で胎盤への圧が加わり,大気中の新生児より圧が大となるために起ると解される。胎外へ出て数分内の新生児体重増加から計算して,胎盤から80mlの血液が入つてくるとおもわれるが,分娩と同時に臍帯を切離すると,その血液が胎盤に残されることになる。それで臍帯を切離するのは,ずつと遅れるのが正しい。帝王切開で産れた新生児では,産道で胸部が圧迫されないが,子宮収縮で胎盤血を新生児へ送りこむことがないわけである。胎内より低い位置に新生児をおけば少量の胎盤血は新生児へ流れてゆく。緊急帝王切開で母子ともに至急出産を要するときは,臍帯がすぐ切離され,胎盤血は新生児へは入ってゆかない。正規予定の帝王切開では新生児死亡4%であるに反し,緊急切開では8%以上で,これは種々の原因によるが,胎盤血が流れこんで,肺血管床拡張を満してくれない為にもよるのである。そこで著者は無菌漏斗に胎盤を取り,臍帯を切りはなした新生児は蘇生台上におき,胎盤重量を判定しつつ,その血液を臍帯を通して輸血する方法を考案した。
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