Japanese
English
症例報告
先天性十二指腸閉塞の1例
A case of congenital duodenal stenosis
鈴木 重男
1
,
水野 正彦
1
Shigeo Suzuki
1
1焼津市立総合病院産婦人科
pp.145-148
発行日 1961年2月10日
Published Date 1961/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409202376
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Ⅰ.緒言
近年になつて新生児死亡率が激減したのは,産科学の進歩・化学療法の発達等の結果に他ならぬが,それと共に従来余り顧みられなかつた未熟児と先天性奇形とが新生児死亡を左右する因子としてクローズ・アップされて来たかの感がある。殊に先天性奇形はメスによらなければ救い得ないために,新生児に手術的侵襲を加えることがそれのみで致死的なことであるとする旧来の考えから,それが生命を直接に脅かす奇形である程,救い難いものとして放置されて来たのである。
それのみか,著者等がここに報告する先天性腸閉塞症は放置すれば殆ど生後1週間以内に死亡するので,診断すら不明のまま死亡するものも相当数に上ると思われるのである。しかるに,Fockensが1911年に廻腸部閉塞の手術に成功して以来,症例と共に次第に手術例も増加し,最近ではGrossが53%,Bensonに至つては71%の手術成功率を発表すると云うように本症の診断治療共に漸く軌道にのりつつあるのである。本邦においては,明治36年に岡田が外科学会で解剖標本を展示したのを始めとして現在までに40例程の報告があるが,手術成功例については近年岡本・栗屋の生後5日の1例(昭和26年),和田による4例中2例(昭和31年),奥田等による生後7日の1例(昭和33年)等を数えるようになつたのである。
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