Japanese
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薬剤の臨床
妊娠時のいわゆる生理的貧血と鉄剤投与の効果について
On so-called physiologic anemia in pregnancy and the effectiveness of iron agents
厚地 千恵子
1
,
中島 佐和重
1
Chieho Atsuji
1
1国立金沢病院産婦人科
pp.1209-1214
発行日 1959年12月10日
Published Date 1959/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409202104
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Ⅰ.緒言
妊娠後半期には血液量が増加し,血液が稀釈さわて血色素(以下Hbと略称)量が低下し,そのために末梢血の血液検査の上で貧血の所見があらわれることは,Dieckmann1)(1934年)の主唱以来一般に認められており2)-13),これは生理的貧血と称せられ,治療を要しない健常状態とされてきた。
ところが近年進歩した血液検査から得られた成績14),15)や正常妊婦に鉄剤を投与した揚合の血液所見の改善成績など5),16),17)によつて,生理的貧血の存在を疑問視する傾向が強くなつて来ている。従来臨床的に,生理的貧血の限界としてDie-ckmann8)が規定したHb値10g/dl (62.5%)以上のものに対して,鉄剤を投与すると血液所見が著しく改善される事実は多数発表されている16)-21)。このような,これまで健康な状態として放置されていた生理的貧血は,実は病的な状態であつたとする見解が正当なものであるとすると,この事実は臨床的には重大な意義を含んでいるといわねばならない。
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