原著
更年期症状に対する男女混合ホルモンデポーの臨床効果
織田 明
1
1甲南病院産婦人科
pp.995-1001
発行日 1955年12月10日
Published Date 1955/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409201279
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緒言
所謂更年期症状として総括されているものは内分泌平衡障害の他に,之と関連して各種の自律神経症状(のぼせ,興奮,心悸亢進,熱感等)並に精神的変調(気分変換,過敏,憂鬱等)がある。私もこれらのものを一括して更年期症状の概念に包括して取扱つた。従つて狭義の更年期症状,欠落症状及びそれ以外の更年期障害様症状が含まれる。
更年期症状の真の原因は不明の点も尚多く残されているが,主な考え方は卵巣機能失調特に機能低下に主因し,脳下垂体前葉の機能亢進を来し,甲状腺,副腎,膵臓等が加わつて多腺性の内分泌失調症と,更に自律神経系の平行失調が加わつていると解せられている。従つて症状は複雑多岐に亘り,治療的立場より観ても決して一律視し難いものであるが,主な治療法としてはホルモン療法,プロカイン療法,各種鎮静剤投与,間脳照射法及び精神療法等があり,一番多く用いられているホルモン療法の主体をなすものは以前は卵胞ホルモンであつた。即ち卵胞ホルモン療法は前述の如く更年期に於ける性腺の衰微による卵巣の機能低下に基くエストロゲン産生,放出の減少に対する補充療法としては一面合理的であるが,更年期には屡々エストロゲン過剰期が介在することがあるから,之のみで単一的に治療せんとすることは正しくなく,時にはエストロゲン療法の無効の場合,或は反つて増殖性子宮出血を起したり,乳腺症や癌素質に対しても一応の考慮を要する。
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