原著
妊娠時期判定に對する子宮底の高さと長さとの標準偏差不偏推定量の比較檢討
菊地 和江
1
1慶應義塾大學醫學部産婦人科教室
pp.451-456
発行日 1952年10月10日
Published Date 1952/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409200685
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緒言
妊娠時期及び分娩豫定日の診斷法としては,最終月經より起算する法(月經基準法),子宮の大さより計算する法(子宮基準法),及び胎動初感時期より算出する法(胎動基準法),との3法があるが,これらのうち實用的價値のあるのは月經基準法と子宮基準法との2者で,胎動基準法は單に參考となし得るのみなることは成書の教ゆるところである。而してこの最終月經起算法に就いては何等論するところはないが,妊娠子宮底が小骨盤入口平面から腹腔内に隆起して腹壁接觸を開始する妊娠第5ヵ月以降の,「妊娠子宮の大さ」の計算,即ち子宮底を目標とした子宮縦軸の測定法に關しては從來より種々論じられており,當初は劔状突起尖端と臍高とを基準としてその間のへだたりから「子宮底の高さ」を求め子宮の大さを判定していたのである。即ち體格,榮養状態,年齢,人種等によつて個人差の甚しい,而も位置の不安定なる臍高亦は劔状突起尖端を基準として,計測者自身の手指の使用による何横指上或は下という記載法を用いて測定していたものであるが,その後Piering (獨・1908)は臍高を基準とする子宮底計測は,臍高それ自體が個人差により甚しく不安定なる事を指摘し,最も安定度の高い恥骨結合上縁と,子宮底とを基準點とすべきことを唱え,また,Spiegelberg (1891)はこれの卷尺による測定法を提案し,Mc Donald (1906)は實際にこれを「子宮前壁の長さ」として計測した。
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