診療室
新生兒の哺乳に就て
三谷 茂
1,2
1日本醫科大學教
2日本赤十字社産院
pp.157-158
発行日 1952年4月10日
Published Date 1952/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409200609
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授乳開始の時期に就ては古來から多數の學説があるのは勿論人種氣候風土習慣などで地域的にも大いに異なるものである。從つてその時期をどうしなければならないと云う事もないし,又どうしたのが最もよいと云う結論には到達し得ないと思う。要はその新生兒の哺乳力の問題であつて生前正常な發育を遂げた新生兒に於ては肝臓にも生後24時間までは十分に使用し得られるだけの糖原質が保存されているが發育不良なる早産兒に於ては生後5〜6時間で既に貯藏されている肝臓糖原質を證明することが出來ない。而して充分生後の榮養を貯藏している正常兒に於ては生活力旺盛て哺乳力も強く與えれば初期から哺乳量は相當多量である。處が早産兒に於ては早期哺乳が必要であるにも拘わらす1回の哺乳量は極めて少なく且つ生後早期に哺乳を行わんとしても哺乳能力のない場合が多い。生後8〜10時間で與える早期授乳と生後24時間以上を経過して與える晩期授乳との二種類の方法があるが早期授乳は寧ろ早産兒にこそ行う方法であると思う。古來早期授乳の利點とする所は早くから母子兩者に授乳法を練習せしめることが出來ると云うこと,吸引の刺戟によつて乳汁の分泌を増進することが出來ること,榮養に富む初乳の攝取によつて初期體重の減少を少なくするのみならず初體重への體重恢復が速かになることなどが擧げられている。
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