境界領域
妊娠と心不全
田坂 定孝
1
1千葉大學醫學部田坂内科教室
pp.1-7
発行日 1952年1月10日
Published Date 1952/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409200568
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婦人が一般内科的疾患に侵されうることは男子と何ら異るところはない。産婦人科的疾患の治療中,内科的疾患が合併してくることも,反對に内科的疾患に罹患中の患者に産婦人科的疾患がその合併症としてくることも屡々經験するところである。このような場合,われわれは内科醫としては産婦人科方面の知識を必要とするし,婦人科醫としては充分な内科的知識と経験をもつことがこれら疾病の完全な診噺治療上缺くことが出來ない。然るにそれぞれの専門の分野についてはともかくそれ以外の科目に關して充分な知識經験を持ち合わしていないために思わない重大な誤診や誤った治療法を行つていることがないとは云えない。腹腔内腫瘍と妊娠とを誤つたり,妊娠中毒症による悪阻を胃炎や胃潰瘍と誤つて治療したりすることはないとしても,妊娠や月経の際の微熱と血沈の促進をみて結核を疑つたりすることは案外少くないかもしれない。又最近特に屡々當面する人工妊娠中絶の適應判定,内分泌方面における内科と濠婦人科との重要な關聯等者の密接に關係する問題は極めて多く,相互に各領域における知識を交換し,連絡を密にする必要は限りなく多岐に亘つている。
これらの中,産婦人科方面に必要な循環器疾患について述べることを依頼されたが,これとても問題は大をく全べてについて詳細に述べることは到底この場所で出來る相談ではない。
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