速報・豫報
ナイトロヂンマスタードAの惡性絨毛上皮腫に對する態度に就て
德永 幹雄
1
1國立霞ヶ浦病院
pp.493-494
発行日 1950年12月10日
Published Date 1950/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409200421
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緒論
ナイトロヂンマスタードの惡性腫瘍に對する治驗例は,すでに數多く報告せられている。然し婦人科領域に於ける報告はいまだ數多くはない。當科に於いては數十例の性器癌に使用,その經過を觀察中であるがいまだその成績を報告するに至つていない。その間,二例の惡性絨毛上皮腫に十劑を使用,内一例に著效をみとめたので病状報告を兼ねて同劑の同疾患に對する態度に就て記述しようと思う。
44才の5回經産婦。昭和25年7月6日惡脉の未期のものとして地方の開業醫より送院せらる。同患者は昭和24年6月胞状鬼胎の掻爬手術を受け其の後時々不正出血があつたが更年期の爲と思ひ放置してあつた。所が本年5月初旬より持續的の性器出血あり加ふるに呼吸困難を伴ひ7月初旬始めて醫治を乞ひ前記の診斷のもとに當院におくられたものである。來院時歩行に耐へず。榮養状態著しく低下す。胸部は全面的に罹音を聽取し呼吸數1分間40を越へた。心に著變をみとめず,下腹部を觸診するに子宮は恥骨上三横指にふれ可動性なし。内診するに右尿道下部,腟壁に過鳩卵大の暗紫赤色の表面滑なる轉移をみとむ。子宮は手拳大に肥大し惡臭のある出血を多量にみとむ。血色素80ザーリー白血球5400,赤血球369萬血沈1時間平均50粍,血壓118〜70フリードマン2萬單位強陽性。胸部寫眞至る所に肺轉位をみとむ(第1圖)。
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