今月の臨床 卵巣がん─最新の治療戦略
初回治療
4.組織亜型別の治療法
3)胚細胞腫瘍
小倉 寛則
1
,
森重 健一郎
1
1岐阜大学医学部産科婦人科
pp.908-913
発行日 2011年7月10日
Published Date 2011/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409102727
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胚細胞腫瘍は病理学的に良性腫瘍,境界悪性腫瘍,悪性腫瘍に分類されている.胚細胞腫瘍は卵巣腫瘍全体の20~25%を占めるが,本悪性腫瘍となると卵巣癌全体の3%ほどである1).SEERによる胚細胞腫瘍(悪性腫瘍)760症例のデータ解析の結果,組織学的には未熟奇形腫が最も多く,次にディスジャーミノーマ,卵黄嚢腫瘍と続きこれ以外の胎芽性癌や絨毛癌はまれであるが悪性度が高い腫瘍群である2).また複数の組織型が混在する混合型胚細胞腫瘍も認められる.わが国では成熟嚢胞奇形腫の悪性転化が36%と最多で,卵黄嚢腫瘍(26%),ディスジャーミノーマ(18%),未熟奇形腫grade 3(9%),そしてそのほかへと続く3).若い女性に多く発生し,悪性度の低いものから高いものまでさまざまであるが,近年の化学療法の進歩により劇的に治癒が見込めるようになってきたことが特徴的である.
胚細胞腫瘍(悪性腫瘍)は上皮性卵巣癌に比べて増大が早く,通常は巨大嚢胞化や出血,壊死に伴って腫瘤触知や腹痛といった症状を呈してくるため比較的早期に診断・治療されることが多い.積極的に妊孕性温存手術を行い,必要に応じてプラチナベースの化学療法を行う治療がスタンダードと考えられ,進行癌の患者でさえ治癒するようになってきた.本稿では胚細胞腫瘍(悪性腫瘍)の治療について記すが,日常診療には『卵巣がん治療ガイドライン』をぜひ参考にしていただきたい.
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