今月の臨床 異所性妊娠
治療法の選択
3.薬物療法のメリット・デメリット
銘苅 桂子
1
,
青木 陽一
1
1琉球大学医学部器官病態医科学講座女性生殖医学
pp.1085-1089
発行日 2010年7月10日
Published Date 2010/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409102424
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はじめに
異所性妊娠はfirst trimesterにおいて最も罹患率と死亡率の高い疾患である1).超音波診断装置の改良とhuman chorionic gonadotropin(hCG)検査により,そのほとんどは破裂前に診断されることから,薬物療法を考慮する機会が増えてきた.異所性妊娠をより早期に,適切に診断することは,薬物療法を成功させる最も重要な因子である.
異所性妊娠に対する薬物療法としては,メトトレキサート(methotrexate : MTX),高浸透圧糖液,プロスタグランジン(prostaglandin)についての報告があるが,今回は,主に使用されるMTXについて述べる.
MTXは葉酸代謝拮抗薬であり,DNA合成を阻害することで,絨毛細胞の増殖を抑制する.その機序は,MTXがジヒドロ葉酸レダクターゼと強固に結合し,ジヒドロ葉酸がテトラヒドロ葉酸へ還元されるのを阻害する結果,DNA合成を阻害するというものである.Tanakaら2)が,卵管間質部妊娠に対するMTX療法をはじめて報告してから,異所性妊娠に対する薬物療法は1980年代に確立し,広く受け入れられるようになってきた.Lopscombら3)のreviewによると,MTX療法の成功率は78~96%,治療後の卵管再疎通率は78%,子宮内妊娠率は65%,卵管妊娠を反復する率は13%と報告されている.しかしながら,日本においてMTXは保険適用外であるため,治療の原則は手術療法である.そのためその使用については十分なインフォームド・コンセントのもとで行う必要がある.
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