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[1]はじめに
昨今の女性のライフスタイルの変化に伴い,比較的高齢女性が不妊治療を受けるケースが増加しており,40歳以上の女性も稀ではない.そこで一般的な不妊治療に加齢が妊孕能に及ぼす影響を加味して対処することが求められている.すなわち,不妊治療を行う前に個々の症例において,卵巣にどの程度の卵子が残っているかどうか(卵巣予備能)を的確に判断したうえで治療方針をたてることが重要である.
排卵機構における卵胞発育過程と卵子数の変化をGougeon1)は次のように説明している.Resting follicleがgonadotropin sensitiveとなって卵胞発育が始まり,preantral follicleが3周期かけてpreovulatory follicleとなり,排卵が起こる.一般的には多数のpreantral follicleが発育周期に入るが,排卵周期に入るまでにかなりの数の卵胞が閉鎖に向かい,排卵周期に入った発育可能卵胞は10~15個まで減少する.しかし,poor responderではこの発育可能卵胞数は1~数個と少なくなっている.排卵誘発における卵胞刺激はこの時点から行うので,排卵周期に入った発育可能卵胞数が少ない症例の卵胞刺激は不成功に終わることが多い.
Assisted reproductive technology(ART)の成功率を左右するものは,患者の加齢に伴う卵巣予備能の低下(卵の質の低下,採卵数の低下)によるものが最も考えられ,個々の症例の卵巣予備能をART施行前に的確に把握することは,ARTの予後(採卵数,妊娠率)を推測することのみならず,医療提供側にとってはARTにおける卵巣刺激方法の工夫や改善の動機づけとなり,患者側においては自分の卵巣の妊孕能の限界を知り,いたずらな期待感を防ぐ手段となることが考えられる.また,40歳以下の比較的若年者においても,調節卵巣刺激(controlled ovarian stimulation:COH)に予期せず反応しないpoor responderを事前にスクリーニングすることで無効なCOHを回避できる.さらに,poor responderは将来早発閉経(premature ovarian failure:POF)につながる可能性もあり,その早期の把握もQOLの観点から重要である.
卵巣予備能検査には,血中FSH基礎値,血中エストラジオール基礎値,インヒビンB,抗ミュラー管ホルモン(anti─müllerian hormone:AMH),胞状卵胞数(antral follicle count:AFC),卵巣容積,卵巣血流,クロミフェンチャレンジテスト(clomiphene citrate challenge test:CCCT),卵胞刺激ホルモン卵巣予備能テスト(FSH ovarian reserve test),ゴナドトロピンアゴニスト刺激テスト(gonadotropin agonist stimulation test)がある2).
本稿においては,患者に侵襲を与えず,外来で簡便に施行できるAFCと卵巣容積(図1)について解説する.
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