今月の臨床 母体救急
妊産婦死亡の歴史的推移
山崎 峰夫
1
1神戸大学医学部産婦人科
pp.678-683
発行日 2007年5月10日
Published Date 2007/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409101369
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
はじめに
古事記には,日本の列島諸島をはじめ数多くの神々がいざなぎの命といざなみの命との間に誕生したというわが国の国産み神話が伝えられている.そのなかでいざなみは,最後の分娩が原因となって死亡したとされており,いわばわが国初の妊産婦死亡例である.そのような伝承が記録された背景には,妊娠・出産が女性にとって危険な難事業であることへの古代人の畏れの念がうかがえる.これに対し現代の先進諸国では,少なくとも一般社会においては「お産は怖い」と考える人はほとんどいない.本稿では,母体死亡が稀ではなかったほんの百数十年前から現在に至る間の医学全般および産科学における診断・治療学の進歩を振り返ってみたい.
Copyright © 2007, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.