今月の臨床 無痛分娩・和痛分娩ガイダンス
VI.硬膜外麻酔分娩と妊婦
妊婦の疑問に答えます
70.下肢を自由に動かしたり,歩行することはできるのですか.
山本 哲三
1
1札幌東豊病院産婦人科
pp.552
発行日 2004年4月10日
Published Date 2004/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409101244
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1 はじめに
硬膜外麻酔分娩では,産痛に関係する知覚神経を遮断すれば目的が達成されるのであるから,運動神経は遮断する必要がない.また,知覚神経線維と運動神経線維の局麻薬に対する感受性には差がある.すなわち,知覚神経枝は局麻薬によって運動神経枝より遮断されやすい.
以上のことを考慮すると,局所麻酔薬濃度をできるだけ低くすることにより知覚神経だけを選択的に遮断できることになる.その結果,下肢の運動も自由であり,筋力の低下もなく歩行も自由にできることになる.
しかし実際には知覚神経を完全に遮断する麻酔薬の濃度は運動神経の一部も遮断してしまい,下肢の運動はある程度できるが,筋力の低下により自由な歩行ができなくなる.また,遷延分娩などで長時間麻酔を必要とする妊婦では,歩行できないことは排尿行動が制限されることになる.このことに対応するには,分娩第2期まで持続導尿カテーテルを採用するか,間欠的導尿を行う必要がある.
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