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1 診療の概説
女性は解剖学的特徴,そのほかの要因により細菌が尿路に侵入しやすく,膀胱炎になりやすい(表1).膀胱炎は経過により急性と慢性に分類される.急性膀胱炎は性的活動期の若い女性に多く,急性に発症し症状も強いが,治療に対する反応は良好で,抗菌薬を3~5日間投与すれば治癒する.一方,再発を繰り返す膀胱炎や難治性膀胱炎のほとんどにおいて,宿主側の要因(基礎疾患),細菌側の要因,薬剤側の要因が影響している(表2, 3).
宿主側の要因として,尿路の基礎疾患,感染防御能が低下する全身疾患の併発,易感染性薬剤の服用が挙げられる.感染防御能低下が強いほど原因菌の種類が増加して難治性となり,薬剤耐性も出現しやすくなる.腟内細菌叢が乱れると腟分泌物のpHが高くなり,細菌繁殖に有利に働く.尿路の基礎疾患としては神経因性膀胱が最も多く,次いで膀胱腫瘍,膀胱結石などがみられる.難治性で再発性の膀胱炎では,基礎疾患の正確な把握と適切な尿路管理が必要である.
細菌側の要因として,複数細菌感染,菌交代,耐性獲得,バイオフィルム形成が挙げられる.再発時には前治療の影響を受けて,緑膿菌,セラチア,エンテロコッカスなどの薬剤耐性菌が分離されることが多く,複数菌感染例も少なくない.また,治療当初は有効であったものが,宿主の感染防御能の低下により菌交代現象を起こし,菌交代症へ移行することもある.さらに,ほとんどの細菌は,菌体外多糖類(グリカリックス)を産生し,細菌バイオフィルムを形成する1).抗菌薬はバイオフィルムおよびその中の細菌に対して無効なため,再発性の難治性病巣となる.
バイオフィルムおよび基礎疾患を除去しない限り,抗菌薬による治癒は期待できない.また,薬剤の特性と薬剤の相互作用を熟知し,適切な抗菌薬を選択することが重要である.
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